■兄ちゃんと同じ学校に通いたい!
「本人が突然に言い出しましてね。先生どうでしょうかね?」
5年生冬の個別面談でお父様から話を聞いたときは即答しかねる状態でした。「大好きなサッカーをやらせたいので受験はしないと思います。」
当初は中学受験をする予定はほとんどなく、小5の春から週に一日だけ、なかざわ塾で算数と理科の単科講座を受けていただけです。内容も、受験学習というよりも算数や理科を好きになる学習を中心に指導を進めながら、家庭課題も一切出していない状態でした。本人の気持ち次第では「受験をするかも知れない」とは聞いていましたが、残り一年で、ほぼ受験知識がない状態から慶応湘南藤沢(SFC)を目標とするとは...。
「お兄ちゃんが毎日楽しそうに学校へ通うのをみて、本人がその気になっちゃいましてね。
ダメ元でチャレンジさせようと思いましてね。先生如何ですか?」 との問いかけに
「本人は覚悟できているのですね。
やってみましょう。」
お兄さんは、私の教え子でSFC生です。その兄に似て、普段の学習態度を見ていても素直で真面目な生徒です。
『強いモチベーションがあるならもしかしたら過酷なトレーニングも乗り越えられるかもしれない!』
全力でサポートしてあげたい気持ちが強くなりました。
大好きなサッカーも日曜日だけにして、毎日塾に来て勉強する覚悟はできているとのこと。お父様と話ながらダメ元ではなく合格させる為の学習プランを作り上げいきました。しかしお子様がこなせるかどうかこの時点では未知数だったのです。
■夏までは算数の基礎学力を重点的に強化。狙いは9月以降の国・社...
可能性を強く感じたのは、読解力が通常の小学生のレベルからするとかなり高いポテンシャルを秘めていることを冬休みの学習を通して確認できたからです。言語要素は通常の小学校のレベルでは申し分なく、受験レベルまで引き上げることが課題となります。が、それも些細なことです。重要なのは「文章をしっかり読み込める基礎的な読解力」であり、この力なくしていかなる難関校合格も難しくなります。言語要素以外にも語彙(ごい)の少なさや記述力の脆弱さなど、対応が必要な項目が多くあり、統合的に強化が可能な『今解き教室 記述教室』を残りの8カ月間受講することで、語彙力・記述力を鍛えることにしました。
さて問題は算数です。半年と少し指導してきましたが、慶応湘南藤沢の入試レベルまでは当然考えておらず残り時間を鑑みて指導するうえで最も思案が必要となる教科です。「ここは目標から逆算し、SFCに合格するのに必要な分だけの学力を身につけさせよう。」言い換えれば、同じ難易度の他校には受からなくてもSFCに合格する勉強を第一と定めカリキュラムを組み立てました。
どのような学校対策でも
必要となるのは基礎学力です。
まずは学力の土台を一から丁寧に組み立て、その上に作る建物がいわゆる志望校対策となります。算数の土台ができたらあとはSFC対策のみを考え、残りの力を得意科目になるであろう国語と社会に費やして得点源とする計画でした。
■答えが合っているだけではダメだよ!大切なのは解法を論理的に表現すること!
国語の強化は予定通りに「今解き教室」での記述作文のトレーニングが大きな効果をあげ、夏を過ぎたころには公開模試の成績も極めて良くなりました。テーマ作文を書かせても、とても高度な文章構成ができるようになり、模擬試験の長文記述では完全解答は書けなくても、必ず部分点を獲得できるようになりました。これは「今解き教室」で作文トレーニングを実施させている生徒全員に言えることです。
記述力は読解力とは全く別の力として鍛えることができ、書いて表現する能力は入学試験のみならず子供たちの将来には必要不可欠なスキルでもあるのです。膨大な知識を覚える社会の学習なども、本人の粘り強い性格にあった学習法を進めることで入試までには目標値まで到達できそうです。また理科は、当初から直前までに完成させることを考えて計画的に進めていきました。
さて、問題の算数です。ある程度の基礎学力は身についたのですが、当初の目標値にはほど遠くこのままでは大きな弱点となってしまう恐れがあります。優秀で丁寧な学習はするのですが、そこは男の子で、
分かっていることを省略してしまい、
思考がつながらずに結果として
問題が解けなくなることが見てとれました。
新たな対策として、理解したことをノートに書いて表現させるノートスキルのトレーニングを徹底的に実施しました。
たとえ答えが合っている、理解できていることでも、図や式でノートに詳しく表現されなければ、指導後にもう一度書き直させる。幾度となく繰り返される書き直しの中で、表現のポイントを学びかつ論理的な思考を体得する。効果的ですが、ハードで精神的に負荷の高いトレーニングです。
■面接対策も考えた指導で準備万端。でも本人は不安でいっぱい。
算数は徹底した基礎対策とノートスキルの向上により、夏前には最も得意な科目となりました。これで夏からの文科系科目の強化に十分な時間をかけられます。もともと読解力はあったので、記述対策と言語要素対策を中心に夏の学習会でカリキュラムを組んで学習を進めました。10月以降には公開模試の国語を見ると、「今解き教室」での学習が狙い通り功を奏し、長文記述では必ず部分点を獲得できるようになりました。偏差値的なものは足りませんが、SFCに向けての学習対策はほぼ万全な状態です。また、このころから面接対策に向けて、日常的な部分での応対の仕方や言葉の使い方などのトレーニングも入れてまいりました。
ただ、最後まで模試の結果は振るわず、12月の四谷の合不合判定テストで初めて4教科で60に達した程度です。やはり数字だけ見てしまうと本人も不安でいっぱいです。
「君の目標はSFCに合格する力をつけることであって、公開模試で良い点をとることではない。SFCに合格する力はついたから、自信をもって受けてきなさい」
入試直前にかけた言葉です。
本心からそのように思っていましたし、
結果も当然そのようになると信じていました。
■受験を終えた君へ ― 塾長なかざわから、ひと言。
君は、とても粘り強く物事にあたる才能があります。また、文章での表現力に素晴らしい素質を感じます。中学合格は君にとって通過点でしかありません。SFCではいわゆる受験学習はありません。実社会で役立つ学問をするための学校です。ぜひSFCでこの素晴らしい2つの才能に磨きをかけてください。
君の目標に向かう姿勢には、なかざわ塾の後輩達も、指導させていただいた私も誇りに思っております。
[オプション選択をした講座]
・今解き教室
・理系質問教室
■合格した先輩から受験生へのメッセージ
受験を始めようと思ったきっかけは、兄が通っている学校での生活がとても楽しいと言っていたからです。受験勉強中は、自分の見たいTVや好きなスポーツを我慢しなければならなかったのですが、でも合格して楽しい学校生活を送りたいという目標を達成するためだと思い、頑張ることができました。
慶応湘南藤沢はとても楽しく、自分自身で学校から与えられる情報を管理したりすることによって自立できるようになる学校なので、皆さんも是非来てください。